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生きるという意味

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たて続けてに2冊ばかり本を読んだ。

ひとつは「戦場のピアニスト」(原題「The Pianist」ウワディスワフ・シュピルマン著/佐藤泰一訳 春秋社)、もうひとつは「約束の地」(樋口明雄著 光文社)。
いずれも「生きる」という意味を深く考えさせられる、ドシッと胸に響く名著だった。

「戦場のピアニスト」の方は映画化もされてかなり有名になった作品だからご存知の人も多かろう。ポーランド・ワルシャワに住むユダヤ人ピアニスト・シュピルマンの、ナチスドイツによるホロコーストからの逃亡劇だ。

主人公を次から次へこれでもかと襲うあらゆる不幸、想像を絶する苦難の道のりはいつ終わるとも知れぬ地獄の責め苦のよう。これがフィクションなら多少救われもするだろうが、すべて紛れもなく実際の体験とのことだ。ただユダヤ人に生まれたというだけで、虫ケラ同然に扱われ、殺されてゆく仲間たち。その屍を乗り越えて、それでも諦めることなく「生きる道」を模索し続ける主人公の姿に心打たれ、ただ愕然として読み進むのみ。

そしてようやく最後に、少しだけ救われる。しかし逆に、その救ってくれたものが今度は皮肉にも救われない。著者はそのことに対して様々な想いがあるだろうに、ちょうどシーソーのバランスが傾いて上下が入れ替わったようなものだとでも言いたげに、淡々と書き進める。

なんともいえない読後感が残る。

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ちなみにボクは、この物語は映画で観たのが先だ。だいぶ前の話になるけど、すごくよかった。監督はロマン・ポランスキー、シュピルマンにはエイドリアン・ブロディ。この役者さん、すごく好きなんだ。最近では「ザ・ジャケット」という映画がよかった。演技も印象的だが、なにはさておきその顔がとても特徴的だ。一目見たら忘れない。

*   *   *   *   *

続いては、樋口さんの最新作「約束の地」。
11月21日に発売になったばかりの新刊を予約して手に入れた。というのも、予め樋口さんの日記でその執筆過程を拝読していて、産みの苦しみにのたうち回る氏の御姿を拝見し、これは傑作に違いないと確信していたからだ(日記はとあるSNSにあるが、残念ながら一般には公開されていない)。

筋書きはここでは言うまい。ぜひ手にして読み、新鮮な感動を味わってもらいたい。
前者「戦場のピアニスト」が「死」から逃げ続けてあがく生への執着とするならば、本作は「生」が常に「死」と隣り合わせであることを如何に理解し、受け入れ、そしてそこでどのように生きるかと捉えられる。

特筆すべきは、自然と野生動物の描写。臨場感たっぷりに、あたかも目の前に野生動物の息づかいが生々しく感じられるごとくに、しかし冷静な筆致で物語が紡ぎ出される。奥にあるテーマは重く、辛いものだが、それを淡々と、いや冷静というよりは意図的に抑えた表現で、それがむしろリアリティを生み出していて、物語の世界に引きずり込まれる。

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自然と野生動物への畏敬と、それらを見る哀しみに満ちた視線。そして「死」を見つめ、しかし前へ前へと歩を進め必死で生きようとする人間への讃歌。読み終わってなにかが解決するようなハッピーエンドではない、ゆえにこそ深く考えさせられる作品だ。
ボクの、あるいはあなたの「約束の地」は何処・・・?と。

*   *   *   *   *

久しぶりに読書にハマってしまった。
気がつけばもう12月。
今年もあっという間に過ぎ去ってゆく。
そういえば前回の人間ドックの結果も出て、まずまず良好な健康状態のよう。
脂肪肝とメタボ予備軍は予想通りだが、これらは少し痩せれば問題ないそうだ。
その他には、尿酸値がやや高いと出た。このままいけば痛風になるとのこと。
いやだなぁ。
来年は少し摂生するようにしよう(笑


Comments:17

JIMO 08-12-10 (水) 21:11

そう言えばどっかで感想文の宿題を出されてたような気が・・・。(笑)
尿酸値上がってますか!そうですか!!上がってましたか!!(笑)

さむ丸 08-12-10 (水) 23:48

約束の地は読もうと思ってたんだよね。
買おうっと。

107 08-12-11 (木) 0:24

△ JIMO さん
センパイ!(*´∀`)
・・・しかし、うれしそう(笑
リミットちょいオーバーでしたよ。まだ遠い!と独り合点してますw

△ さむさん
「約束の地」いいですよ!
ぜひぜひ。お薦めです ( ´ー`)

さとしん 08-12-11 (木) 1:14

約束の地、気になります。近いうちに
読んでみようと思います。

futaba 08-12-11 (木) 9:46

3つ目のフォト、
彼は何が悲しいのか?
どこかの国旗の怒り顔に感じます。
>OH!ひぐちあきおさんは作家さんでしたか?
私も韓国ドラマばかり見てないで読みませう。

noobooboo 08-12-11 (木) 11:08

こちらを読んで、もしかして?と某?SNSに行ってまいりました(笑)
その作品の生まれる様子を私も読んでみたかったのですが、
友人までしか日記は公開されていないようで残念でした。
お知り合いのお知り合いですが、作家さんがいるなんて嬉しいです。
是非読んでみたいです♪

107 08-12-11 (木) 13:05

△ さとしんクン
うん。気になるなら、ぜひ読んでみておくれ^^

△ futaba さん
そういわれれば、アフリカや南米、あるいはアメリカン・インディアンの部族の旗とか(バッファローで)、ありそうですね。蹂躙される怒りを表す・・・
人と人、あるいは自然との関わりについて思慮を巡らす読者であれば、この哀しみは誰もが感じることができると思います。ぜひに^^
哀号!w

△ noobooboo さん
そうなんです、残念ながら公開されていません・・・
日記だけでも、優れたエッセイを読むようなんですよ。
「約束の地」は樋口さん渾身の一大巨編です。
機会があれば、ぜひお読みいただきたいですよ^^

メディック 08-12-11 (木) 17:08

生きるという意味 か
生きているということに意味があると思っていたので
生きるという意味を考えていなかった・・・
あんまり深く考えると頭がむずむずするので
たまにしか考えないようにしています
でも自分の心の雑記帳には確かこう書いてあったような
人間は死ぬ為に生きていると思う
一生懸命死ぬ為に
たぶん

ひぐちあきお 08-12-11 (木) 18:30

107さん、それからみなさま。
恥ずかしながら……ですが、本当にありがとうございます。107さん、熱い応援をありがとうございます。また未読の方は、ぜひお読みください。四六判の単行本ゆえちょっと高くてすみませんが、その値段ぶんの価値はあると思ってます(汗)。
〈約束の地〉は、人と野生動物、あるいは人と人との距離感覚がテーマです。そして生と死のお話です。
今回、執拗に登場人物に繰り返しいわせたセリフに、こういう言葉があります。
「死は忘れたり克服するものではなく、ともに生きていくもの」
もし心の琴線に触れる方がいらっしゃったら、ぜひお読みください。こうして作家が前線にしゃしゃり出て宣伝するのはルール違反のような気もしますが、自分にとってとてもとても大切な一冊なので……。
107さん、勝手ながらこの場をお借りいたしました。

107 08-12-11 (木) 20:38

△ メディックさん
もちろん、「生きている」ことそのものにも大きな意味があると思います。
「一生懸命死ぬ為」ということは、ただ単に「死ぬ為に生きている」のはなくて「どう生きたか」ということでもあると思いますし、それは同じくらいに大きな意味のあることだとも。
あんまりやりすぎるとただの言葉遊びになってしまいそうですが・・・
「死」は大前提としていつもそこにあり、それを理解しながら如何に日々を生きるか、ボクはそのことを大事にしたいと思うのです。
たぶん、メディックさんも同じことを言っておられると^^

△ ひぐちあきおさん
ををっ。ご降臨!(*´∀`)
お出ましいただき、恐縮です。
そうでした、「死は忘れたり克服するものではなく、ともに生きていくもの」印象的なセリフです。ベアドッグ「ダン」の名前に、ひぐちさんの強い想いを見るようでした・・・
ボク個人としては、御書「約束の地」においてその言葉はもちろんのこと、特に自然・野生動物との関わり方について深い考察と感動を得ることができ、目から鱗もポロポロ落ちました。だからそういうものに興味のある人には特に読んでもらいたい、この理解を共有し、大切に育てて行きたいとも思うのです。
本書の中でのWLPというものの存在は、ひぐちさんの中でのある意味「現実的な理想」を具現したようなものと感じ、またそのご主旨に大いに共感しつつ・・・では現実のニポン社会では、と考えると暗澹たる気分になってしまうということもあります。
ネットのほんの片隅の、ちっぽけなブログ・・・でも、微力ながらせめてできることはしたい、誠に僭越ですが、そんな想いで紹介させていただきました。
とにかくも、いい作品を有難うございます。

みやび 08-12-11 (木) 22:46

会社帰りに立ち寄った本屋で「約束の地」を手にとって迷った挙句に「文庫版が出るまで待つか…」と棚に戻したのは、つい先日の事でした。このエントリー見た後であったならば、きっと手にしたものをレジまで運んでいたんだろうなぁ…
うむ、ここは107さんの言葉を信じて、再び本屋へ行ってみようかな。

小雅 08-12-12 (金) 14:10

表現方法は違いますが何か共通するテーマを感じます。
今の時代(こういう言い回しは好きじゃないんですが…)何を感じどう生きるかって事が随分と置き去りにされている感じがします。
もちろん小生も言えた義理ではなのかも知れないですが、生きている=生かして貰っていると言う感覚は忘れないようにはしているつもりです。
近いうちに是非読んでみようと思います。
そらそうと、尿酸値、高いのねw
おいらも同じだわ。
しかしなんでこの時期美味いものってどれもプリン体が多いのかねぇ。。。

107 08-12-12 (金) 18:56

△ みやびさん
信じていただけるととてもうれしいですよ^0^
この本、ハードカバー四六判で二段組500ページ超の巨編ですから、文庫にするとなるとかなりの厚さになるか、巻を分けないといけないのではないでしょうか。
ここはぜひ、もう一度本屋に足をお運びくださいな^^

△ 小雅クン
そう、だからひとつの記事にしてみたんです。
人としてどう生きるか。永遠のテーマかな・・・
ああ、釣りに行きたい(*´∀`)
尿酸、気になるねぇ
プリン体が入ってるから美味いのかもなぁと。
でも聞くところによると尿酸は抗酸化作用の強い物質だから老化は防げるのかも、などと安易に考えてるよ〜(笑

Solo 08-12-13 (土) 23:01

こんにちは。
「戦場のピアニスト」、自分も映画をTV放映したものを見ました、初めは何気なく、しかしだんだんと引き込まれてしまった、良い作品でしたね。
「尿酸値」高め、フフフ、ここにもお仲間が。
痛風におびえているのは自分も一緒です(笑)

107 08-12-15 (月) 21:25

△ Solo さん
レス遅れましてすみません^^;
そっか、お仲間だったんですね。
それであんなビールを・・・w
食生活もさほど偏ってるとは思わないので、これで痛風になるんならどうせいっちゅうねん!?と思っています。来るなら来い!てな感じのこのごろですよ(笑

piro55 08-12-17 (水) 1:02

こんばんは!
「戦場のピアニスト」。私も好きな作品の一つです。
観ながら、「自分なら…」とずっと考えていました。
隣人の死を目の当たりにし、家族と引き裂かれ、生きていくための全ての希望を失い奪われた世界で、ここまで強くなれるだろうかと、身を硬くしての鑑賞でした。
そして最後のあのドイツ人将校(?)が救われてくれたら、と一心に観ていました。
読書。良い時間でしたね。私も最近、読書と編み物のどちらを取るか、毎晩困惑しています。
そしてブログがほったらかしに。
是非、拝読されていただこうと思います。「約束の地」!!
一緒にダイエットしましょうか^^

107 08-12-17 (水) 16:34

△ piro55 さん
こんばんは♪
piro55さんも「戦場のピアニスト」お好みとこのこと、とてもうれしいですよ^^
第二次大戦を描いた戦争映画にはドイツ軍将校をさも極悪非道な機械のごとき冷血人間かカタブツの能無し軍人のように見せるステレオタイプが多くて辟易するのですが、これは人間らしくてとてもいい描き方だったと思います。
このホーゼンフェルト大尉に関する歴史の事実を調べると、その後のソヴィエト軍や政府の彼に対する非人道的な扱いに憤りを禁じ得ません。何が正義で何が悪なのか、勝者と敗者の力学に起因するどうしようもない矛盾は古今東西を問わずいずこも同じで、それに対して一市民はどこまでも無力なのが悲しいばかりです・・・
樋口さんの「約束の地」、piro55さんにもぜひ読んでいただきたい傑作です。
読書と編み物に最適な冬の夜は長くて、そして美味しいものばかり^^
でもこのままいくとどんどん膨らむ一方ですので・・・
ダイエットお付き合いいただけるととてもうれしいですよ(*´∀`)

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