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渡り廊下と中森明菜

音楽のことでよくビートルズだ、サルサだと洋楽のことばかり言ってるけど、思春期・・・高校生の頃は、ミーハーよろしくいっちょまえに中森明菜のファンだったりするのだ。といっても、あの当時全盛だった親衛隊だのファンクラブだのというノリではない。今から思い返すと、中森明菜個人に特別興味があったワケではなく、彼女の歌う歌がとても好きだった、という表現の方が正しいかもしれない。
高校2年の初冬、ちょうど今頃だった。

同じクラスの、いつも2人組でいる女の子の口やかましい方が、昼休みに「ちょっと友達が呼んでるから来てくれる?」と突然言ってきた。恥ずかしがりやで女の子に対して斜に構えていたボクは普段その女の子たちと話す機会なんてほとんどなくて、だから「何だろう」と不審に思いつつもついて行くと、渡り廊下の一番端っこにその2人組の片割れが立っていた。当時ボクの通っていた高校の渡り廊下といえば、昼休みには「付き合って」いるカップルが愛を語る場だったから、あれれ!?という感じだった。というのも、その待っていた女の子は、ボクの中学時代からの友人と「付き合って」いる筈の子だったからだ。仮に、K子としておこう。

「107くん(呼び名は便宜上ね)、中森明菜、好きだったよね!?」
(実際は京都弁だけど読みにくかろうと思うので、便宜上、標準語で)
「え!?・・・ああ、うん」
「あのね、今度、京都会館に来るの、それで、チケット手に入ったんだ」
「・・・」
「それでね、107くん、行かないかな、と思って・・・」
「・・・そりゃあ、行きたいけど」
「じゃあ、行く!?行くよね?」
「・・・そのチケットいくらするの」
「違うの!2枚あってね。・・・その・・・私と、一緒に行かない?」
「・・・」
「えっとね、私も好きなんだ、中森明菜」
「・・・」
「行かない?」
「行かない」
「なんで?」
「行きたくないから」

話を早く終わらすには、はっきりと意思表示すべきだと思った。一刻も早くこの場を立ち去りたい一心だった。K子は、とても傷ついた表情をした。少し可哀想に思ったけど、でもボクは彼女が好きではなかったんだ。それに、友人と付き合っている女の子と一緒にコンサートを見に行くなんて、その後の起こりうるであろう厄介なゴタゴタを想像するだけでウンザリもした。そもそも、この渡り廊下で話しているという事態そのものに、すでにイヤな予感がしていたのだ。

案の定、数日経って、同じ中学出身の別の友人(おせっかいで、何でも口を挟みたがる世話焼き。悪いヤツじゃないんだが、あまり好きではなかった)が放課後、ちょっと来い、という。校舎の隅っこの方に連れていかれて、周りに誰もいないのを確かめておもむろに、「お前、どういうことだ!?」ときた。
何のことかおおよその見当はついたが、一応訊く。「何が?」
「K子」とすかさず。「お前な、あの子、友達の彼女だろ」
「知ってるよ」
「じゃ、なんでちょっかいかけるんだ!?」
「・・・何もしてないよ」
「ウソつけ。あいつ(友人)、そのことで彼女と喧嘩して泣いてたぞ」
「知らんよ。何にもないから、知らんとしか言えんよ」

そいつは、明らかにウソつきを見る目でボクをじっと見た。ボクはあまりに馬鹿馬鹿しくなって目をそらした。が、それを勘違いしたらしい。
「いいか、二度とするな!」
捨て台詞を残して、去って行った。

次の日の朝、クラスでK子と目が合った。彼女はとてもバツの悪そうな表情をして、目を伏せた。
休み時間、K子のカレ氏である友人がやってきて、「お前なぁ〜」とつぶやきながらおもむろにボクにヘッドロックをかけた(もちろん本気ではないけれど)。その後、ボクの目の前でK子と仲良く話しはじめた。
それで、ボクはすべてを理解した。

どうやら、ボクの方から声をかけたことになっているらしい。そういうことで、K子は友人との喧嘩を終わらせたようなのだ。そりゃそうだ、ボクが悪者、で、万事めでたしで話が済む。早い話が「アテ馬」にされたのだ、と。
そのとき、生まれて初めて、ボクは女性の怖さというのを知った。

数ヶ月後、渡り廊下を通りがかったら、隅っこの方で呼び止められた。K子が独りで立っていた。
「あのね、明菜のコンサート行ってきたんだ。それでね、写真撮ってきたから。107くん、行きたかったんじゃないかと思って焼き増しした。これ、あげる」と一気にまくしたて、数枚の写真をボクの手に押し込んだ。
見ると、一面真っ黒な中、真ん中5ミリほどだけが明るくて、目を凝らすとそこに赤いドレスを着た人間らしきものがポツンと立っている。そんな写真だった。

「これ、明菜?」
「うん!これ、明菜」
「・・・」写真を見たまま、黙り込む。
「・・・」K子はもじもじしながら、目を見開いてボクの様子を見ている。

「・・・貰っておくよ。ありがと」ボクの負けだ。
「ううん。・・・あの。ええっと。・・・ご、ごめんね」
「・・・もういいよ」
「ええっと・・・その・・・」とても居心地が悪そうだ。
ボクは、いいから、と口だけ動かして一歩下がり、軽く手を振ると、K子は「うん」とひと言残してパッとあっちに走って行った。振り返ることもなく。

K子とはその後、高校を卒業するまでずっと言葉を交わすことはなかった。
写真は、二度ほどの転居を経てもなお手元に残していた。忘れるべからざる教訓として。

ようやく捨てることができたのは、卒業後10年も経ってからのことだった。


Comments:16

マロニエのこみち・・・。 06-12-04 (月) 12:44

つまらなくはないです
楽しかったですよ^^
青春の一ページ、107さんの性格が、だいぶ理解できてきました^^
でも、最後の、『忘れるべからざる教訓として。』
これは、ちょっと『かっこつけ』なんじゃないんですか〜?
本当のことを白状しなさい!(爆笑)
中森明菜の歌は私も好きですよ!
来生たかお、加藤登紀子、中島みゆき、井上陽水。・・
好きなアーティストさんの曲ばかりですもの
彼女は繊細過ぎるのでしょうね もっと割り切って、本業を頑張ってほしいです
実力があるのにもったいないです

teardrop 06-12-04 (月) 18:33

中森明菜、懐かしいです〜。
>ボクは女性の怖さというのを知った
これに、笑ってしまいました(スミマセン)
苦い思い出話ですね。。
それにしても、やっぱり、女性は怖いのでしょうかねぇ・・。
自分が女なので、その辺はイマイチ、ピンと来ないのですが・・(汗

sekisindho 06-12-04 (月) 18:36

107さん、こんばんは。
マロニエのこみちさんの仰るとおり、楽しかったですよ^^
ただ、「恥ずかしがりやで女の子に対して斜に構えていたボク」だけはどうも理解できませんけど?!
乱暴者のイメージは、ホントはシャイでフェミニストな性格を隠すためなのでしょうかね。
S,M、Nに続いてフェミニストのFをプラスして、パーセンテージの判断はマロニエのこみちさんにお任せしましょう(笑)

konatsu 06-12-04 (月) 19:04

こんばんは☆
いやはや、女心は秋の空というか、女は小悪魔というかねえ
確かに女は怖いかも(笑)
なんだかほろ苦い高校時代のお話でしたね、つまんなくなんかないですよ〜

cafe_m 06-12-04 (月) 19:12

ちょっとだけ107さんの性格覗かせていただきました。
10年も写真を手放さなかったところは、マロニエのこみちさんと
同様の見解ですが…。
楽しい?思い出話、次回も期待しています。

オードリー 06-12-04 (月) 21:41

うひょひょ〜^^。….です。
おもしろかったですよ。はたから見る分にはね。
感想、意見としてはマロニエさんとsekisindhoさんとをたして2で割った感じ…?
でも直感的に思うのは、私自身と107さんは似ているかもしれないと感じた事ですね。私も女性ですが...(一応^^。 女性は怖いと思いますもんね〜 
sekisindhoさんのいうM。S。N。F。の分類には入りたくはないけれど、なんだか共感できるんですよね……
でも、今となっては….の青春の頃のお話。いいもんですね^^。
107さんとは殆ど歳も変わらないので、周りの記憶がオンタイムです^^。

Solo 06-12-04 (月) 22:03

う〜んこわいっすね〜、みんながみんなそうというわけではないのでしょうが、やっぱり過去にお付き合いした中にはまけず劣らずのこもいましたね、そういうやつに限って別れ際「裁判やったら勝てるのよ!」とか吼えていった思い出もあります・・・・
今思い出しても身震いが・・・・・・みんなあるんですね(笑)

noobooboo 06-12-04 (月) 22:57

恋も二度目なら〜♪が好きです。^^
中森さんの不器用な生き方が気の毒です。
答えは一つじゃないのに。
107さんみたいに、教訓に・・・くらいに思えればいいのに。
それにしても、白か黒か、敵か味方か・・・みたいな、
107さんが面白いですね。でもどこか優しさが入っていて。
教訓となったのか・・・続編をお待ちしています♪

107 06-12-04 (月) 23:06

△ マロニエのこみち・・・。さん
有難うございます(^ ^;
別にボクの方から恋心を抱いて失恋したということでもないのに、なぜかとばっちりの傷を負って、しかもそれが思いがけず浅くなかった、という理不尽、不条理を忘れないために・・・というのがカッコつけすぎなら、忘れられなかった、と言えばいいでしょうか(笑
確かにその子に対して「情」は多少湧きましたが、しかしついに「愛」とか「恋」とかがボクの内に芽生えることはありませんでしたよ。
中森明菜、昔のようにいい歌を歌ってほしいもんです。ずっと、見守っているんですけどね。
△ teardrop さん
怖〜い女性がおられるのは確かです。あるいはみながそんな怖さを、秘かにどこかに持っているのかもしれないとも思ってます。ピンとこない、なんて言ってる女性に限って、怖そうな気がしますよ〜(笑
10年以上経ってようやく「苦さ」が消えて、遠く若い日の記憶となりました。今はこうして、笑って書けますから・・・
有難うございます。
△ sekisindho さん
こんばんは〜。お楽しみいただけましたか・・・(^ ^;
当時は、ホントに恥ずかしがりやだったのですよ。もちろん、今もその本質は変わっていません。乱暴者(笑)のイメージがあるとするなら、ご指摘の通りかなと思います。ただし女性に対して乱暴を働いたことは一度もありませんけどね・・・
フェミニストについては、偉大なるフェミニストであるsekisindhoさんにはとてもかなわないと思っておりますです (´∀`)
△ konatsu さん
こんばんは♪
いつぞやの「ねずみ園」のように、小悪魔な恰好をしているだけの女性なら大好きなんですけどね(笑
秋の空。あるいは猫の目。怖いです。
konatsuさんも、十分にそのケがあるのでは、と勝手にで大変申し訳ないですが、そんなイメージを抱いています(^ ^;
有難うございます。

107 06-12-04 (月) 23:30

△ cafe_m さん
お越し有難うございます。
まあ、こんな経験、その他諸々から、性格がねじ曲がっております。
こみちさん、カフェさんの両マロニエさんは、意地悪ですね・・・(ノД`)
一番突っ込まれたくないところを、チクチクとつついてくださる。
次回、もしあれば、またぜひつついてくださいまし(笑
△ オードリーさん
お楽しみいただきまして、何よりです・・・
似てますか!? オードリーさんがこんなにねじくれた人間だとは想像もしていませんでしたので、驚きましたよ(笑
同じ歳くらいなんですね。そうあのころは・・・(遠い目
ホントに、今は昔。
有難うございます。
△ Soloさん
Soloさんも、なかなか悲惨な体験がおありのようで・・・
「裁判」を持ち出されるとは、相当・・・(笑
ボクが北海道に行ったときには、女性の怖さについてぜひ語り合いましょう。
釣りなんかそっちのけで(笑
△ noobooboo さん
お。ボクもその歌、大好きなんですよ。いい歌ですね〜
今は多少マシになりましたが、昔は極端な性格してましてね・・・
これでも女性には優しいつもりなんですよ。今回のも、一番仲の良かった高校時代の友人にもつい最近まで真相を話したことありませんでしたから・・・
それより、nooboobooさんもひょっとして結構怖い女性なんじゃないかな、と、ブログを拝見しててふと思うときがありますよ(笑
続編は、またいつか・・・^^

piro55 06-12-05 (火) 1:09

こんばんは!
あっという間に読みきりました。
こんなに素敵な思い出、あるもんなんですね〜。
そこにも感動です。
しかし、女は怖いですね。
でも107様は高2にしてかなりのジェントルマンなのですね。

107 06-12-05 (火) 14:34

△ piro55 さん
有難うございます♪
piro55さんは、優しい方ですね・・・
でも「女は怖いですね」なんてとても客観的におっしゃってますが、やっぱりpiro55さんも怖い女性なのでしょうか〜〜^^
ジェントルマンは、過分なお言葉。
何も喋ることができなかっただけです・・・(^ ^;

7wth2 06-12-05 (火) 21:00

今晩は。
とても自然に読み通しました。
全く抵抗ありません。彼女が考えた逃げかたも在りそうなこと。その後で、気まずい想いを清算したと考えたのも、なるほど。
それを感じ取って、スマートに処理。107さんは今の107さんと同じ格好良さも見えます。
青春のいい思い出ですね。大きくは傷つかず、されど相応の興奮が。

107 06-12-05 (火) 23:04

△ 7wth2 さん
こんばんは〜
このテの女性の怖さは当時のボクはもちろん未経験でしたから、衝撃でした。
スマートに処理できたというよりは、当時のボクの性向や対話能力、経験からして選択肢はそれしかなかった、という感じです・・・ (ノД`)
でもまあ、今となっては、悪くない思い出となりました。
有難うございます^^

piro55 06-12-07 (木) 0:24

こんばんは!
うふふふふふふふ・・・・
怖いですよ、優しくなんてないですよ。
風太君みたいにお腹は真っ黒です。

107 06-12-07 (木) 10:18

△ piro55 さん
なんと・・・piro55さんのイメージがぁああっ!
・・・やっぱり女性は怖いや。(ノД`)・゜・。
でも、「うふふ」なんて含み笑いをされると、苛められてみたい、なんて、
Mなボクとしてはちょっとだけ思ってしまいましたよ(笑

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