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ヴーヴ・クリコ

061125champagne.jpg気がつけば早11月も末になり、12月、師走が目の前である。今年もボジョレ・ヌーヴォを注文せず買わず、去年と同じクリスマス前の12月半ばに届くドイツの白の新酒(→前回参照)を楽しみにしているところだ。それで今回はワイン繋がりということで、シャンパンについて少し。

何かの祝いの贈答や酒好きな人への贈り物に、ボクはよくシャンパンを使う。銘柄はいつも決まっていて、ヴーヴ・クリコのポンサルダンという黄色いラベルのもの。ヴィンテージの高いものを見れば銘柄も金額もキリがないので、もっともスタンダードなラインナップであるこれが、ボクの懐具合にもぴったり、分相応なのだ。もっとも、単に個人的にシャンパンを飲むとなると、やれクリュッグの細首だのテタンジェだのと好き放題を言うのだけど。しかしこと贈り物となると、ヴーヴ・クリコなのである。

理由は簡単、若い頃に観て大好きになった映画「カサブランカ」でこのシャンパンが使われていたから。1942年製作のこの作品、そもそもは対ドイツ戦争の戦意高揚のためのプロパガンタとして作られたB級やっつけ映画だというが、とてもとても、宝石のような名セリフと名シーンがきら星のごとく散りばめられた素敵な名作映画である。主演はハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマン。今さらボクごときがしたり顔で言うまでもないが、ボガートはどこまでもカッコよく、バーグマンは女神のような美しさなのだ。

061125casa.jpg

この映画で、ボガート扮するリックが営む「カフェ・アメリカン」というクラブで、客たちが手に手にシャンパングラスを持ち、飲んでいるのがヴーヴ・クリコなのである。金持ちは製造年指定のついたヴィンテージ、普通の客はおそらくポンサルダンとおぼしきものをそれぞれ。バーグマン扮するイルザとその夫であるヴィクター・ラズロが初めてリックの店に来て注文するのもヴーヴ・クリコ。回想シーンのパリのアパルトマンで、少し切ない雰囲気の中でリックとイルザが乾杯するのもこれまたヴーヴ・クリコなのだ。ヴーヴ・クリコがスポンサーか!?と下世話な想像が浮かぶぐらい、とにかく随所のキーポイントにヴーヴ・クリコが飲まれるので、とても印象に残っているのである。

20代の初め頃、街でバーテンをしていたときに、バーテンの誕生日には誰からともなく酒を持ち寄り、盛大にパーティをやっていたことがあった。日頃馴染みのお客は皆がそれぞれ趣向を凝らした珍しいシャンパンやテキーラを用意して持ってきてくれ、誕生日の人はそのうちの最も好きなシャンパンをボトルごとラッパ飲みできる、という特権が与えられた。そのシャンパンの栓を抜く「ポン!」という景気のいい音でパーティは始まって夜通し続き、後半にはどこの誰とも分からないヤツまで乱入し「ハッピー・バースデイ!」などとわめき散らしてタダ酒を飲む。幸せな誕生日の主人公は、最後にはこぼれた酒が大きな水たまりのようになったバーの床に大の字になって、スブ濡れで意識不明のまま夜明けを迎えることとなるのだった。

同じシャンパンでも、リックのカフェ・アメリカンの上品さとは似ても似つかない光景だけど。しかし、思い返せばありとあらゆる銘柄のシャンパンを浴びるほど飲み尽くすことのできた、稀有な体験だった。今そんなことをしたら10分ももたず救急車で病院に直行することになるだろう。
とりとめもなく長くなった。

まあそんなワケで(どんなワケだ!?)、ボクの大切なシャンパンはヴーヴ・クリコなのである。
 


Comments:15

piro55 06-11-25 (土) 0:34

こんばんは!
バーテンをされていたときの思い出、カッコイイですね。
お酒に簡単に飲み込まれてしまう私にとっては、憧れてしまいます。
「カサブランカ」この時代の映画、観るのが好きですが
107様のような視点で観れるともっと素敵ですね^^

107 06-11-25 (土) 17:28

△ piro55 さん
こんばんは〜!
これ・・・カッコいいですか?
piro55さんのお近くでもしこういう場があったとき、そこに居合わせるのは、うら若き女性としてはお避けになった方が懸命かと思いますよ・・・(^ ^;
古い映画がお好きなんですね♪
このへんの感じだと、「モロッコ」の若きゲーリー・クーパーとマレーネ・ディートリッヒとか。もうちょっと新しくなって、ヒチコック映画とかでしょうか。そのあたり、ボクもとても好きです。ケイリー・グラントなんていう俳優、ご存知?大好きなんですよ^^

オードリー 06-11-25 (土) 20:37

仕事仲間でPCでいつもお世話になっている方に、ちょうど、ワインをプレゼントしようか…と、想っていた所に107さんの記事^^。タイムリーです。
私も泡盛やワインが好きですが、味覚は肥えていないので「飲めれば何でもいい〜^^。」タイプ(恥ずかしい…
ですから贈り物となると、どうしようか迷っていたんですよ。
参考になります。ありがとうございました。

ひぐちあきお 06-11-25 (土) 21:49

〈カサブランカ〉……モノクロの古典映画の中では、いちばん繰り返して観た映画です。たぶん20回ぐらいかな。どの場面も好きなんですが、「星の数ほどバアがあるのに、なんだってここへ来たんだ」と、ボガートがひとり苦い酒を飲む場面がたまらないです。
劇中のもうひとつの酒といえば、ビシー。傀儡政権の名称ゆえに、最後に警察署長がゴミ箱に捨てる。あれは印象的でした。
昔、ある女性と議論をしましたが、この映画は男が女にふられる話でしょうか、それとも女が男にふられる話? ぼくは断然、前者だと思うのですが……。

107 06-11-25 (土) 23:26

△ オードリーさん
おや。お役に立てましたようで、光栄です^^
日頃このブログで酒に関するウンチクを並べ立ててますが、ボクも基本的には「飲めれば何でもいい〜」で贅沢は言いません(笑)。選べる環境にあるなら、じゃあこれ、みたいな感じで・・・
でも相手の方が男性で、女性からヴーヴ・クリコを贈り物にもらったら、妙な誤解をするかもしれませんよ〜〜^^
△ ひぐちあきおさん
繰り返し観た回数、負けませんよ〜〜(笑
「星の数ほど〜〜」いいシーンですねぇ・・・そのあと、サムに「As Time Goes By」を「おい、今度はオレの為に弾け」とリクエストしますよね。それを聴きながらパリの思い出に・・・ほんと、たまりませんです。
ビシー水もありました!あのシーンの署長、とてもいいです。
さて・・・若い頃に観たときは、このラストをそのまま「男が身を引いた」と捉えていました。だからこそ、男のストイシズムとダンディズムがさらに光るのだと。
しかしそれから年齢を重ねた今、考えてみるに、おっしゃる通り、男が女にフラれる話だと思います。「その後」を予想してみるに、男はきっと一生引きずっていきます。あの後リックは、その昇華作用としてのレジスタンス活動に身も心も捧げるでしょう。生死を顧みず。それはやはり、それだけ男の中の彼女の存在が大きくあり続けるのだという証しでもあると思います。対して女は・・・これはボクが女性ではないので想像するしかないのですが、きっと「割り切った」のではないかと思います。言葉が悪ければ「割り切ることができた」と。ゆえに、男が女にフラれた、という風に。
しかしこれは、女性にそんなメに遭ってなければ得られない発想でもあるのではないかと思いますが・・・ひぐちさん?(笑

マロニエのこみち・・・。 06-11-26 (日) 1:11

『最後にはこぼれた酒が大きな水たまりのようになったバーの床に大の字になって、
スブ濡れで意識不明のまま夜明けを迎えることとなるのだった。』
・・・最悪ですね〜!(爆笑
まあ、若き日の特権というヤツですね
私はこんなことはしないですけど・・’ってあたりまえか・笑)
まあ、男性をこれに近い状態にして、放って帰ったことはありますけど・・(笑
カサブランカは、多分男性が観て、共感や憧れを覚える映画ではないかと思います
女性はもっと違うタイプ・・・例えばグレゴリー・ペック(誠実そうな男前))だとか
フランス男優のジェラール・フィリップ(腺病質のアブナイ男前)などの方に惹かれるものだと思います(笑

107 06-11-26 (日) 12:28

△ マロニエのこみち・・・。さん
女性が酒の海に横たわって意識不明になったら、そりゃもう大変です。
何人か、見たことありますが(笑
しかし、マロニエさんと飲むとなると、男は大変そうですねぇ・・・
ボクも腺病質なんですが・・・GPほどアブナくないし色男でもないですけど(笑
それってやっぱ「モンパルナスの灯」のモディリアニがバッチリ、ツボということなんでしょうか。破滅型の男が好きな女性って多いですね・・・
じゃあ先日衛星放送でやってたのを観たんですが、狂王「ルートヴィヒ」を演じたヘルムート・バーガーなんてのは如何でしょう。同性から見てもゾクゾクするような色気を感じてしまいましたよ。
グレゴリー・ペックほど誠実になってしまうと、同性からはあまり魅力的には感じない部分もあります。「ローマの休日」に見られるストイシズムには憧れますが、でもあまりに品行方正すぎるのと端正すぎるのとで、面白くないかな。ボガートは醜男だからいい、ということもあるかも(笑

7wth2 06-11-26 (日) 16:01

こんにちは。
貧乏学生で、映画や喫茶店より、食事にお金を使ったので、映画も多くは知りません。
しかし、この映画は見ました。物語りも物語ですが、イングリッド・バーグマン。
何処から見ても美しいが、ジ〜ト相手を見つめる目には目が眩みました。
こんな女優は日本にいない!ファンと言うより女神でした。
「ヴーヴ・クリコ。」
再々でてきたシャンパンがヴーヴ・クリコだったんですね。
その頃は「ニッカの鬚?」が飲めれば幸福。それ以上のお酒にはとんと関心がありませんでした。
文中の写真のサービス有難うございます。
少しうきうき。

オードリー 06-11-26 (日) 18:47

….えっ。おぉ〜っとヴーヴってそんな意味あり?なんかもあったんですか….更にアドバイスをありがとうございます^^。
ヴーヴにするところでした、無知って怖い^^。
でも、どんな意味合いがあるんですか?映画の事もさっぱりなので……
           オードリーなのに…^^。

sekisindho 06-11-26 (日) 22:31

107さん、こんばんは。
下戸でお酒はからっきし駄目なのですが、ヴーヴ・クリコはよく知っています。
LVMHグループの傘下で、私が観に行かなかったバレーも、このグループの企業があのマドンナと専属契約していたこともあり、チケットがまわってきたのです。
フランス土産にヴーヴ・クリコをいただいたのですが、一口も飲まないのに、どこかに消えてしまいましたよ(笑)
そんなわけで、酔っぱらって大の字の経験はないのですが、大学でクラブに入部したとき、体育会系のようなクラブ(実際は音楽系)で、50名近くの男子新入部員の歓迎コンパがひらかれ、一人ずつ先輩の前で自己紹介をし、ビール瓶1本ラッパ飲みしなければいけない儀式があったのですよ。
最後は先輩に介抱されたり、つれられて帰るのですが、何故か一人で歩いて帰れた6人の内の一人だったのですよ。

107 06-11-26 (日) 23:26

△ 7wth2 さん
こんにちは〜
この映画のバーグマン、まさしく女神のようですよね。
アップになるシーンなんか、ぼわあっと紗がかかったように光り輝いていて、それが単なるライトワークだけではなさそうな、ご本人があたかも光を発しているかのように、眩しすぎてまともに見ることができないくらいの美しさです。
ぜひ、写真をご堪能くださいませ^^
△ オードリーさん
あはは。すみません、冗談でした(笑
普通に贈り物として使っても、何にも違和感も誤解もありませんのでご安心を。
でも、渡し方と添える言葉によってはホントに誤解される可能性もありますので、その点はご注意を・・・これはヴーヴ・クリコに限らず、ですね^^
△ sekisindho さん
こんばんは〜
さすがご存知ですね。
フランス土産のヴーヴ・クリコ、もったいない・・・(‘〜`;)
お声をかけていただければ、私めがいただきに参上しましたものを(笑
大学の新歓コンパ、ありましたねぇ〜
クラブは何も入っていなかったのでボク自身はひどいメに遭ったことはないのですが、クラブに入った友人たちから色々聞きました。
でも、瓶ビール1本ラッパ飲みして歩いて帰れるのですから、sekisindhoさん、実は飲めるようになればかなりイケる口になられるのでは?^^

noobooboo 06-11-27 (月) 1:40

107さん
こんばんわ。
年末になると忘年会なども増えて、飲みにでかけることも多いですが、(残念ながら今年は状況的になさそうです!笑)女性がヒドイ酔い方をしているのを見ると、目をそむけたくなりますね。
映画と一緒に107さんも甘い思い出がありそうですね。^^
ひきずるほどの想いができたのは、
今になるとそれはそれで幸せですよね。

107 06-11-27 (月) 9:41

△ noobooboo さん
こんばんは〜♪
女性が飲んで荒れておられる場合、なかなかに手のつけようがないので困りましたよ。
以前はボクもよく忘年会などにでかけておりましたが、ここ数年はとんとご無沙汰です。年末になるとバーが混むのでイヤですね(笑
さあ、映画のような甘い恋の記憶が、ボクにもあればいいのですが・・・
残念ながら、この記事のような乱痴気騒ぎの記憶があるばかりです (ノД`)

teardrop 06-11-27 (月) 17:19

こんばんは♪
ヴーヴ・クリコ、夫もお気に入りです。
ルイ・ヴィトンのシャンパンと教えてもらって、当時、ヴィトンがお気に入りだったので(;^_^A クリスマスに買ってもらって、夫と一緒に飲んだことがあります。
シャンパンを浴びるほど飲むなんて・・、ほんと、すごい体験ですね!
私もお酒がダメな体質で無ければ、経験してみたかったです(*T-T)シュン

107 06-11-27 (月) 18:33

△ teardrop さん
こんばんは〜
ご主人のお気に入りでしたか^^
LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループには、名前の通りモエ・エ・シャンドンという超メジャーなシャンパンメーカー(ドンペリとか作ってます)が一員としてありますのに、なんてこのヴーヴ・クリコの、それも「ポンサルダン」だけがルイ・ヴィトンの扱いになってるのでしょうね。不思議です。
シャンパンの酔いは、他のお酒と違うようにお感じになりませんか。
なんつうか、雲の上を歩くようなフワフワした上質な感じ。悪酔いもなく。
ああ〜〜またこんなこと言ってたら飲みたくなる(笑

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