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Barbour

イギリスのアウトドア・ウェアのメーカーに、Barbour というのがある。「バブアー」「バーブァ」と日本語で表記される

(呼び方については「呼び方厨」な輩がうるさいことを言ってるが、通じりゃ別にんなことはどうでもいいではないか。ここでは、そういう輩の神経を逆なでするためにあえてバブアーと呼ぶことにしよう ´,_ゝ`)。

高品質なエジプト綿の生地にたっぷりと撥水オイルを染み込ませたジャケットが有名なブランドだ。英国王室の御用達メーカーでもあり、首の後ろのタグには誇らしげに1〜3種類(年代によって)の王室の紋章が刻まれている。オイルドジャケットといえばバブアー、というぐらい、定番中の定番メーカーなのである。

ボクが初めてバブアーのジャケットを手に入れたのは10年ほどのことだ。知り合いから譲ってもらったGamefair(ゲームフェア)というモデルで、元は競馬観戦用に作られたモデルだったらしいのだが、すっかりフライフィッシャーのアウターとして定着していたものだ。それまでもバブアーに憧れていたのだが、なにしろお高いブランドで、新品を買おうと思えば当時5万、6万は平気でしていたように思う。

そのときボクのものになったゲームフェアは、すでにかなり着込まれていて皺だらけで、擦り切れや綻びも多かったのだが、ぴったりすぎるくらいぴったりだったので喜んで着ていたものだ。むしろ、それくらい着込まれて体に馴染んだものの方がカッコ良くなってくる、という、まあマニアなシロモノなのである。最近もまた少し流行っているようで、時々まっさらの買いたて、下ろしたてのジャケットを着ている人を見かけることがあるが、見た目になんだか落ち着かない。少なくとも数シーズンは着たおさないと体に馴染まないだろうし、まあその過程を楽しむべきものなのだろうが、まっさらのものを見るとこちらまで何だか気恥ずかしくなってしまうのだ。その人にとってはボクのそのような視線など、ホントに大きなお世話だろうけど。

ところがこの数年、中年太りが激しくなってきて、せっかくのお気に入りのボロのゲームフェアがちんちくりんになってしまって着れなくなってしまった。毎年秋になると引っ張り出してきて、ハンガーにかけて眺め回したり着てみたりするのだが、どうにも小さく、肩に余計な肉がついたせいか、袖などは手首のくるぶしが完全に出てしまっていてすこぶるカッコ悪い。気に入っていたのに着れなくて、誠に残念な思いで数年を過ごすこととなった。

barbour2.jpgそれで先日、意を決してインターネットであちこち探しまわってみたところ、程度のいい中古のバブアー・ジャケットを扱っている店を見つけることができた。本当は新品を買うことも考えてはみたのだが、円高とはいえなにしろ高価なものだ。ボクの財布にそこまでの余裕はないので、中古にしようと決めた。 早速いろいろ物色してみて、見つけた!

Bedale(ビデイル)という少しショート丈のモデルの、裏地のチェック柄が通常品とは違うスペシャル・オーダーのViyella(ヴィエラ)という超レアものが、ひとつだけあるのを発見したのだ。そのレアさ加減も天の邪鬼なボクにぴったりで、サイズも現在のボクにぴったりで、まさに今、ボクのためにこれがある、というような出会いに感じたボクは迷わず購入することにした。

barbour1.jpg届いたものを見ると、かなり程度がよかったので、さらに満足してしまった。多少汚れはあるものの、ほとんど気にならない小さなもので、生地はピンと張りがあり、裏地のViyellaタータンも写真で見るより上品できれいな柄である。念のため1日かけて表面と裏面を虫干しし、早速袖を通してみた。着てみるとこれが、本当に誂えたように着心地がよく、体に馴染んでしまった。前のオーナーはイギリス人らしいのだが、おそらくボクと同じような体格の持ち主だったのだろうか、と勝手に想像するのである。

それで、どこかに着ていきたくて仕方がないので、先日早速に釣りに着て行くことにする。夏日が数日続いたりした後なので、のこのことこんなのを着ていくととてつもなく季節外れの格好になってしまうのではないかと心配していたのだが、当日は少し肌寒くなってくれたので、通常のモデルに比べてやや薄手の感のあるビデイルにはちょうど良いのだ、などと独り合点をして深夜に出かけることとなった。

ところが、明け方に現場についてみると、肌寒いどころか、はっきりと寒い。北陸の山々は渓沿いの雪こそ消えたものの、まだまだ春のまっただ中である。気温はひと桁で、ジャケットなしでは車の外に出ていられない。おまけに、すっかり夜が明けてきた空を見上げると、どうも雲行きまで怪しくなって来た。風も強く弱く吹き続け、まさしく雨の気配がすぐそこまで近づいてきている。雨が降る前に、と、そそくさと釣りの支度をして渓に降りることにする。

釣り始めて間もなく、ポツポツときた。と思ったら、雨の粒が見る見る大きくなり、土砂降りになる。バブアーの襟を立て、肩をすくめて雨をやり過ごしながら、少し弱まったらキャストをして、というようなことを繰り返す。数匹のいいコンディションのイワナを何とか釣ることができたのはいいのだが、夕方近くなってまたもや本降りになってきた。さらに追い打ちをかけるように空がゴロゴロと不気味な音をたて始める。やがて近くの山にどっかんどっかんと落雷するに至って、ついに釣りを諦め、林道に上がって木の下で雨宿りをする羽目になってしまった。

大きく枝を広げた木の葉の下で、濡れそぼってバブアーの襟を立て、じっと我慢をしていたら、何とはなしにビートルズの「ペニー・レイン」という曲が頭の中に浮かんできた。リヴァプールのペニー・レイン通りにある床屋の日常を寓話的な詩にした、ポール・マッカートニーの作になる出来のいい歌で、その中にある一節「銀行屋が土砂降りの雨でもマッキントッシュ(レインコート)を着ないで、消防士がずぶ濡れになって床屋に駆け込んでくる」というのを思い出し、そこばかり繰り返し口ずさむ。

土砂降りの雨と雷で最悪の状況だが、歌っていると萎えていた気分もなんだか少しほぐれ、すっかりイギリス気分になってきたところで、ようやく雨足が弱まり、雷も遠くなってくれた。車まで急いで駈け戻り、さっさとウエイダーを脱ぎ捨てて着替え、バブアーを脱いで水を振り払って確認する。
よし、撥水能力も上々だ。あれだけの雨に降られても、バブアーの中に着ていたシャツはほとんど濡れなかった。しかし、その役に立ってくれたバブアーは役目を終え、濡れそぼって打ちひしがれているように見えたので、すぐにタオルで水分を拭き取って車のシートにかけて形を整えてやった。

車のシートに腰を沈め、帰路について今日の日を思い返す。
今日は、まさにこのバブアーの初陣のためにあるような釣行だった。
寒さと雨。それらを新しい持ち主とともに過ごし、ようやく解放されて車のシートに横たわるそれを見て、ボクは何とも言えない感慨に捉われた。
おそらく、このような状況を経て初めて、このバブアーは本当の意味でボクのものになってくれたのかもしれない、と。

 
*ブログを始める以前、本体HPに書いていた散文です。2010年1月にブログに転載しました。

 


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