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星に願いを

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星が、好きである。

子供の頃から好きで、星の図鑑を飽きもせず眺めては、様々な星座や恒星、星団や星雲の名前を憶えたり、それらを実際に目で見てみたくて、お年玉を貯めて天体望遠鏡を買ったりもした。現在の子供のように1回のお年玉で何万円も稼ぎ出すような時代ではなかったし、そういう恵まれた生活環境でもなかったので、数年越しの念願であった。

本当は口径10cm以上の反射赤道儀が欲しかったのであるが、とても子供に手が出せるような値段ではなく、買えたのは口径5cmの屈折望遠鏡であった。視認解像度はたいしたものではなかったが、それでも月のクレータや木星の大赤斑とガリレオ衛星、土星のリング、オリオン座の大星雲やアンドロメダ大星雲などの有名どころを見ることはできた。しかしファインダーに写る豆粒のように小さなそれらの像は、図鑑で見るような美しい映像を期待していた少年にとって満足できるものではなかった。やがて歳を経ていくにつれ様々な関心ごとが他にできてくるようになると、天体観測への熱意は薄れ、せっかく買った天体望遠鏡もいつの間にか倉庫へ、心の片隅へと追いやられてしまうことになる。

ところが、この釣りを始めるようになって、夜討ち朝駆けの強行軍を覚えてからもしばらくは気付かなかったのであるが(あるいは目には入っているのに心に余裕がなくて見えなかったのかもしれない)、あるきっかけから、星空の美しさを再確認して再び夜空を見入るようになった。

数年前のある釣行で、釣場に着いたのは夜明けにまだずいぶん間がある未明だった。いつもなら目覚ましをかけて仮眠を取り、夜討ちで疲れ果てた体を少しでも休めようとするのだが、その夜はなぜか眠れなかった。仕方がないので、煙草でも吸おうとひとりで車外に出て煙草に火をつけ、深呼吸してふと夜空を見上げて、驚いた。満天の、まさに手を伸ばせばとどきそうなくらい、星々がまたたいているのが目に飛び込んできたのである。

言葉では形容しつくすことなど不可能な、空一面に広がる星という星。思わずうれしくなって、昔覚えた星座表を頭に浮かべてそれらを夜空に配置し、あれがそれ、これがあれ、と一通り確認しようとするのだが、今目の前にある星空はそんなまばらなものではない。おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のリゲルなどの超等級クラスはそのあまりの明るさゆえに辛うじて分かるものの、街にいるとほとんど見ることがない2等星以下の星までもが、それこそ隙間なく空を埋め尽くし、星座の形を追っていっても途中で分からなくなるほどの密度なのである。星座を形作ろうとするのはあまりに無意味なことだと感じ、ただただ立ちつくし見とれる他はないほどの、満天の星空だった。

その中でもとりわけ目を引いたものがあった。夜空を埋め尽くす星々の中で、ひときわ目立つ光の帯。銀河。天の川。星々があまりに密集し過ぎてひとつの大きな光の帯となり、川のように蛇行しながら大空を横切っているその姿は、まさしく「天」の「川」としか形容のしようがないだろう。

ものの本によると、我らが地球が属する太陽系は、この天の川の中心部分で生まれたそうだ。そして回転する銀河の中心から、遠心力によって信じられないほどの速さで外側へと放り出されており、現在は銀河系の中心から外縁の間の7:3あたりのところにいるそうなのである。だからもうあと3割進めば銀河系の外へ出てしまって放浪の恒星系となるらしいのだが、まあ今私たちがそれを心配しなくてもよいらしい。そうなるまでにまだ数回は地球上での優先種の隆盛と絶滅を経験しなければならないからだ。温暖期と氷河期が幾数回、というところだろうか。それくらい、銀河系というのは大きいのだそうだ。

遥かな昔、地球がまだメタンと水蒸気の原始惑星だったころは、空いっぱいが天の川だったのだろうか。
水の中にいた私たちの祖先は、水の中からこの星空を見上げて、陸に揚がることを決意したのだろうか。
恐竜はこの星空を眺めて何を感じていたのだろう。
洞窟や竪穴で暮らしていた直立したばかりの祖先たちは、夜の空いっぱいにまたたく星々に畏れ、かつ敬ったのだろう。
木や石に魂が宿ると信じていた無垢な人々は、空に神々が遊戯すると信じたのだろう。

この星空を見ていると、想像の翼はどこまでも限りなく広がり、羽ばたき、大空を飛翔して止まない。

さあ、まだ少し暗いが夜明けは近い。
釣り竿を繋げることにしよう。
そして、渓に立ち、天の川が映り込んだ水面を揺らす、宇宙の彼方からの静かな波紋と対峙することにしようか。

 
*ブログを始める以前、本体HPに書いていた散文です。2010年1月にブログに転載しました。

 
 


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